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2009年7月19日日曜日

二種類の神

 神道のカミには大きな二つの種類がある。即ち神名と共にそのいわば経歴が具体的に述べられているものと、単に神名だけが挙げられているものである。これらの神名に纏わる種々の状況から、我々は、前者を「祭られるカミ」、後者を「考えられたカミ」と呼ぶことにする。祭られる神は、恐らく部落共同体の共通の宗教体験に基づいて、信仰実修の対象として、古くから具体的に斎き祭られて来たカミであり、従って、後の世にも多少とも崇拝者群を持ち続けてきたカミである。更にこの「祭られるカミ」は、これを細分すると、或集団に血縁的に関わっていると考えられたカミ(例えば氏神)と或集団に機能的に関わっていると考えられたカミ(例えば産土神)とに分けられる。これに対して、「考えられたカミ」は、何等かの目的のために、崇拝者群とは無関係に、いわば哲学的に考察されたカミである。西欧の思想史の中では、例の有名なパスカルの「哲学者の神」と「アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神」との区別が、ある意味で似たような事を言わんとしているのであろう。